手や足のしびれが起きてくると、ちょっと気になるものです。しびれも、手を体で踏んで寝ていて、ただしびれているというようなことなら、問題ないのですが・・・。
病院に行くのも何だか怖いし、面倒だし、これぐらいなんでもないだろうと、放置していませんか。しびれの中にも、重大な病気の初期症状だったり、特徴的な症状だったりということもあるのです。
気になるしびれについて、病気とそのしびれが起こる原因についてなどをここでは、ご紹介しています。気になる症状について、早めに発見して、病院に行くなどすれば、まだ治療の方法があることも多いです。手、足の指のしびれについて、お伝えします。
指先のしびれに隠された
命に関わる7つの疾患
脚気
脚気は、ビタミンB1の欠乏によっておこる病気です。
ビタミンB1には、エネルギーの元となる炭水化物の代謝や神経・心臓などの正常な働きに不可欠な栄養素です。この栄養素が不足すると、初期症状は、疲れっぽさや全身のだるさ、手足のしびれなどが現れます。さらに、食欲がなくなってきたり、不眠になってきたり、体重が減少するなどという症状が出てきます。よく似た症状の脚気の場合には、手足のむくみなども出てきます。
つま先に感じる針で突き刺されるような痛みや強いしびれや灼熱感や、筋肉痛や脱力、筋力の低下などの症状も現れてきます。湿性脚気になると血管の拡張が起こり、皮膚が熱と湿り気を帯びた状態になり、心拍数が増えていくことから心不全を引き起こすことがあるのです。脚気は再発もしやすいものです。
ウェルニッケコルサコフ症候群によるしびれ
ウェルニッケコルサコフ症候群は、アルコール依存症の人によく起きる病気として知られています。脚気と同じような初期症状がみられます。眼球運動の麻痺や歩行障害、記憶力・認識力の低下などの症状が現れるのが特徴です。
病状が進行すると、健忘症や作話症、錯乱など、精神疾患になっていきます。原因は、ビタミンB1の欠乏のためにおこります。治療ではビタミン剤の服用、注射、点滴などによる集中的な補給が行われます。
補給効果が出てくると、脚気の症状は短期間で改善されていきます。しかし、ウェルニッケコルサコフ症候群で、脳の一部に不可逆的な損傷がみられる場合では、治療は困難になります。長期に渡って症状が続くこともあるために、手足にしびれや痛みを感じたら早めに病院に行くことをおすすめします。
パニック障害
心身症の一種の過換気症候群では、強い不安や精神的ショックを受けた時におこります。スポーツの後などに過呼吸になって起こることもあります。過換気症候群になると、体内の二酸化炭素が必要以上に排出されて、体の中の酸素と二酸化炭素のバランスが崩れて、手がしびれたり、手足がつってきたりします。
十分呼吸をしているのに息苦しくなり、手足の突っ張ったような感じや、手足のしびれや息苦しさや更には頭痛や耳鳴り、悪寒を感じたりすることもあります。めまいやふらつきの症状が出るのも過換気症候群の特徴です。 無理して動こうとすると、よろけて転倒してしまう危険があるので、横になったりしたほうが良いです。
かつては、紙袋を口に当てて呼吸をするという応急処置が取られていました。それは、今では良くないと言われています。呼吸困難になって大事に至るということもあります。
対応としては、深呼吸をゆっくりとして、落ち着くということが大切です。気分を落ち着けることができたら、ほとんどは数分で症状が軽減されていきます。その後数時間様子を見て状態が急変しなければ、心配ありません。過換気症候群の症状が頻繁に現れる場合には、パニック障害やうつ病などが隠れていることもあります。
動脈硬化によるしびれ
動脈硬化症も、しびれを生じる病気です。家族性の遺伝や食事などの生活習慣で、コレステロールやカルシウムの沈着によって血管の壁が硬くなり、血行障害が生じるのが動脈硬化症です。
国内では50~60代の男性に多い病気として知られ、予防としてメタボ対策が重要とされています。閉経後の女性も女性ホルモンの減少で、同じような状態になりやすいです。
動脈硬化とは、部位を特定せずに起こる症状です。油分や糖分の多い食生活による肥満、運動不足などがあげられます。他にも、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの病気、喫煙なども、危険因子とされています。
動脈硬化が進むと、脳出血や脳梗塞などの脳血管障害が起きて、突然命を危険に晒してしまうことになります。
脳梗塞の場合には、手のしびれや脱力感やろれつがまわらない、ものが二重に見えるなどの症状が出たら、2時間以内に適切な治療を受けることができる設備のある病院に行きましょう。大きな救急病院に限られています。2時間以内だと、後遺症も少なくて済みます。それ以上になると治療が難しく、後遺症で麻痺が残るでしょう。
医学用語で「一過性脳虚血性発作(TIA)」と呼ばれているものがあります。原因は、血管に小さな血栓ができることにあります。一過性という名の通り、数分から数十分ほどで強い症状はおさまるため、病院へ行くことをやめてしまう人も多いのです。そうするうちに、次の大きな発作を引き起こしてしまうというわけです。TIAの症状の中でも、特に見逃しやすいのがしびれの症状です。
副甲状腺機能低下症によるしびれ
副甲状腺ホルモンは、血中のカルシウム濃度を維持したり、上昇させています。
副甲状腺から副甲状腺ホルモンの分泌が減少したり、何らかの理由によりホルモンの作用が妨げられると、副甲状腺機能低下症を発症します。副甲状腺機能低下症は、低カルシウム血症や高リン血症などを引き起こす病気です。主な症状には、低カルシウム血症による手足のしびれ、こむら返り、けいれん発作などです。手足のしびれは、広範囲にわたってビリビリとした感じです。
こむらがえりは就寝時に起こることがあり、頻繁に起こるようになって初めて異常に気付くものです。けいれんは、全身性強直性といって全身が強くこわばる発作として現れます。けいれんの結果として意識不明になることもあります。てんかん発作との見分けがつきにくく、副甲状腺機能低下症と見逃されてしまうこともあります。
頚椎後縦靭帯骨化症によるしびれ
ごく軽いしびれや痛みを放置しておくと、重症化してから有効な治療がない病気になってしまうこともあります。
例えば、頚椎後縦靭帯骨化症がその一つです。
後縦靭帯とは脊髄の前方にある靭帯で、脊椎椎体の後縁を上下に連結して頚椎を補強しています。後縦靭帯が骨組織化して肥厚すると、脊髄や神経根を圧迫してさまざまな神経症状を引き起こします。これが、頚椎後縦靭帯骨化症と呼ばれる病気です。
頚椎後縦靭帯骨化症は日本で最初に報告された病気で、治療・治癒が困難なことから国の公費負担に指定されています。靭帯が骨化すると、肥厚して頸椎の可動性を妨げ、脊柱管内の脊髄や脊髄から分枝します。すると、知覚障害や運動障害などのさまざまな神経障害が引き起こされるのです。
原因は解明中ですが、カルシウ代謝異常、遺伝的な要因などが考えられます。初期症状としては、首の痛み、手足のしびれや痛みが挙げられます。少しすると下肢にもしびれや痛みが生じるようになり、次第にその範囲が広がってきて程度も強まってきます。
何もないところで転倒してしまうなどの運動障害も起こります。排泄もコントロールしづらくなり、頻尿・失禁・便秘などの症状が現れてしまいます。転倒時の捻挫や外傷をきっかけに麻痺症状が一気に現れ、短期間に症状が悪化するのも、頚椎後縦靭帯骨化症の特徴といえます。
悪性貧血によるしびれ
悪性貧血の症状にも、手足にしびれが出るということがあります。悪性貧血とは萎縮性胃炎によって胃粘膜の機能が低下し、ビタミンB12の吸収が減ることで起こります。悪性という名前から恐ろしい病気のように思われがちですが、今では恐れる必要のない病気です。
立ちくらみなどの貧血症状をはじめ、舌炎や食欲不振などの消化器症状、手足のしびれやふるえ・知覚障害などの神経症状が起こります。
いかがでしょう。しびれぐらいと思いがちですが、思わぬ病気が隠れていることもあり、処置を急がないと危ない病気もありますので、気になる症状が続くようなら、専門の病院を受診することをおすすめします。
まとめ
指先のしびれに隠された命に関わる7つの疾患
・脚気
・ウェルニッケコルサコフ症候群によるしびれ
・パニック障害
・動脈硬化によるしびれ
・副甲状腺機能低下症によるしびれ
・頚椎後縦靭帯骨化症によるしびれ
・悪性貧血によるしびれ