腹痛は身体のあらゆる異常のサインです。腸の病気、肝臓・脾臓・胆嚢の病気、膵臓の病気、腎臓・尿路の病気、婦人系の病気、呼吸器の病気、血管系の病気、腹膜の病気、精神的な病気、などで腹痛が症状として現れることが知られています。まず最も重要な事は、腹痛が続いた時は、必ず病院に行ってください。
時に腹痛はとても重篤な病気の初期症状として現れますから、放置しておくと命にかかわることだってありえます。可能であれば複数の診療科で診断を受けると良いでしょう。医師はあなたの腹痛がどのような痛みか、どこが特に痛むのか、などの情報から、可能性が考えられる病気を絞り込んでいきます。今日は医師へ何を報告すればよいのか、あらかじめ自分でチェックしておくべき7つの項目をお伝えします。
腹痛が続いた時に
チェックして欲しい7つの事
1. 痛みの種類をチェック
あなたの腹痛はどのような痛みですか?腹痛を言葉で表現するのはとても難しいことですが、痛みの種類というのは病気を絞り込む上で重要なヒントになります。一般的に使用される腹痛の表現を以下に記しますので、自分の腹痛を表現するのにどれが適しているか、探してみてください。
「刺すような痛み」「呼吸ができないような痛み」:疝痛(せんつう)と呼ばれます。刺し込まれるような痛みで、比較的突然痛くなり、徐々に痛みが増していき、最も痛くなったと思ったら徐々に痛みがなくなっていくような場合が多いです。胆管結石や尿管結石などがこのような腹痛が起こる病気です。
「鈍い痛み」「ズーンと体の芯に響く痛み」:鈍痛と呼ばれます。上記の疝痛と比べると、痛みが強くなったり弱くなったりという波が無く、常に「ジーン」とか「ズーン」といった痛みが続いている状態を表します。胃潰瘍や胃炎で起こりますが、痛みがより強い場合には、臓器に穴が開いていたり、腹膜炎だったりする場合もあります。
「切られたような痛み」「引き裂かれるような痛み」:上記2つの痛みは内臓痛と呼ばれるものですが、「切られたような」や「痛い場所が自分でも明確にわかる」といった場合は、体性痛と呼ばれ、物理的な刺激によるものが多いです。体を動かすと痛みが増すという特徴があります。鼠径ヘルニアや横隔膜の炎症、または腹部大動脈解離などの可能性があります。
こういった腹痛の表現の他にも、「夜中に目が覚めてしまうような」とか「歩く振動のたびに来る痛み」などの表現も、医師にとっては重要な情報ですので、できるだけ細かく伝えてください。
2. 腹痛の場所をチェック
例えば心筋梗塞だった患者さんが「胃が痛い」という腹痛とともに、「左肩も痛くなった。」「奥歯も一緒に痛くなった。」「背中に突き抜けるような痛みだった。」という訴えをすることがあります。腹部でない病気が腹痛として現れるのはよくあることです。腹部のどの部分が痛むのか、併せて別の箇所も痛むのか、ということは、詳しく医師に伝えましょう。
お腹の右側や右の肩甲骨周辺:胆石症
腹部右上の:脂肪肝、肝硬変
みぞおち:膵炎
左脇腹:腎結石
みぞおち辺りや背中:肺炎、胸膜炎
胃とそこから全身に痛みが回る:腹部大動脈解離
右下腹部:虫垂炎
など、腹痛の場所が特徴的な病気がいくつかあります。痛む場所はすべてチェックして的確に医師に伝えましょう。
3. 見た目に変化があるかチェック
腹痛とともに下腹が張ったり、膨らんだりしていませんか?腸閉塞イレウスや鼠径ヘルニアといった腸の病気では、腸内のガスや腸の位置がずれたことによって、通常よりお腹が膨らむ場合があります。「普段と違う」と思ったら、そのことも医師に伝えてください。
4. 腹痛がいつから始まったかをチェック
腹痛がいつからなのかは、とても重要な情報です。ある日から突然痛くなったならば、急性のものと判断でき、胆石や腎結石など急性の病気を疑えます。また、「急性の腹痛が始まった前日に刺し身を食べた」などの情報があれば、アニサキスや食中毒ということも比較的スムーズに判明できます。
逆に、「いつからは覚えていないんだけど、最近は腹痛がひどくなってつらくなってきた」という方は、それもそのまま医師に伝えてください。この腹痛は慢性のものであると判断する情報になります。慢性の腹痛では穿孔性十二指腸潰瘍など、徐々に進行していく病気である可能性が高いです。
5. 腹痛が起きるタイミングや間隔をチェック
腹痛がひどくなったり治まったりする波があって、今は痛くないが、30分前はとても痛かった」、「月経時にあわせて痛くなる」、「毎朝、出勤する直前に痛くなる」など、腹痛に周期性やタイミングがある場合は必ず伝えましょう。胆石や腎結石は痛みに波があります。月経時の痛みなら子宮内膜症などの婦人病の可能性が高く、出勤前に痛くなって休日は腹痛はないならば、強いストレスによる精神的な疾患を疑う必要があります。
6. 今までにかかったことがある病気をチェック
腹痛の原因特定のためには、既往症も重要な情報です。重病の経験がなくとも、例えば、高血圧気味だった人であれば、心筋梗塞や大動脈解離のリスクは高くなりますし、自律神経失調症だった過去があれば、再度自律神経のバランスが悪くなって、腹痛となっているかもしれません。腹痛の場合は関係ない病気は無いと考え、あらゆる既往歴を報告しましょう。
7. 排便・嘔吐との関係をチェック
腹痛の原因が消化器にあった場合は、便に異常が出てきます。便に異常が無ければ消化器以外の原因をさぐれるのです。また、排便によって腹痛が楽になったり、便秘と下痢を繰り返しているのであれば、過敏性腸症候群(略称:IBS)の可能性もあります。
そして腹痛とともに嘔吐感もあるのなら、食道や胃の異常が考えられます。便に異常があってもなくても、医師に伝えてください。
腹痛なんてよくあることです。しかし、重篤なものから軽度なものまで、あらゆる病気の症状に腹痛があるので、あなたの腹痛が重い病気による可能性だって否定できません。そして腹痛の原因を調べるためには、無数の病気の中から、的確に絞り込んでから判断する必要があります。
絞り込むための情報提供は、腹痛で苦しむあなたにしかできません。今日お伝えしたチェックすべき事項を、あらかじめメモにでも整理して、お医者さんに伝えましょう。見当違いな治療はあなたにとっても、お医者さんにとっても悲劇ですから、それを防ぐためにも、詳細な情報を伝えてください。医師は患者の問診から得た情報をもとにして、触診や臨床検査を決定していきます。あなたの腹痛の訴えが診断の第一歩なのです。
今日のまとめ
腹痛が続いた時に、チェックして欲しい7つの事
・痛みの種類をチェックする
・腹のどこが痛むのか、腹以外で痛むところはあるのかをチェックする
・見た目に変化があるかチェックする
・腹痛がいつ始まったのかをチェックする
・腹痛に周期性やタイミングがあるのかをチェックする
・今までにかかったことがある病気をチェックする
・排便・嘔吐と腹痛の関係をチェックする