手がしびれる原因は神経の圧迫。7つの病気と治療法

手がしびれる原因は神経の圧迫。7つの病気と治療法

朝目覚めた時、手が体の下になっていてしびれた状態になることはよくあることですね。これは正座して足がしびれるのと同じように、一時的に血行が悪くなって起こるものなので自然に治ります。

ですが、普段からしびれが続いている、または継続的に時々しびれる状態が続いているような場合、何か病気を発症していることが考えられます。手がしびれる原因となる病気としては、脳梗塞や脳出血、甲状腺機能低下症、ビタミンB1欠乏症など脳の病気や代謝性疾患が疑われます。

脳の病気のような場合はもちろん緊急の対処が必要ですし、代謝性疾患も根本の病気を治す必要があります。しかし、このような疾患がない場合、他にも、神経が圧迫されて起こる手のしびれがあります。

少しくらいのしべれ、と甘く見ていると徐々に症状が進行し、改善できる機会を失ってしまってはいけません。それでは次に、この神経を圧迫する病気と治療法について解説していきます。

 

手がしびれる原因は神経の圧迫。
7つの病気と治療法

 

小指がしびれないのは、手根管(しゅこんかん)症候群

手根管症候群は、手のしびれを起こす特に多い疾患のひとつです。30?50歳の女性に多く発症する、と言われています。この年代の女性は、家事や育児などで手首を酷使することが多いためと考えられます。また、パソコンのキーボードを打つ作業の多い仕事をしている方にも多く見られます。

手根管とは、手首のあたりにある親指から薬指に通じている正中神経を束ねている部分で、 手首を酷使することでこの部分が狭くなり、神経を圧迫してしびれを来しているのです。小指と薬指の外側には別の尺骨神経が走っているため、手根管症候群の場合、小指がしびれることはありません。

治療法は、まずは手首にサポーターなどを用いてあまり曲げたり伸ばしたりしないようにし、安静にすることです。症状が強ければ、痛み止めやビタミンB12製剤などの薬を服用します。更に痛みが強い場合や、症状が慢性的に長期に渡る場合は手術を行うこともあります。

 

薬指と小指がしびれる場合は肘部管(ちゅうぶかん)症候群

薬指と小指に通じている尺骨神経は、肘のところで圧迫されたり、引っ張られることでしびれや痛みを来します。原因として多いのは、野球や柔道などのスポーツ選手や、加齢による肘の変形、ガングリオンというゼリー状の物質が詰まって出来る腫瘤などがあります。

進行すると手の筋肉が痩せていき、かぎ爪指変形という指を伸ばせないような状態になることがあります。治療法は、肘を45度に曲げた状態で固定し安静にすることが第一です。それでも改善しない場合は、神経を圧迫している腫瘤を切除する、あるいは骨を削ったり神経の位置をずらすといった手術を行うこともあります。

 

目が覚めると腕がだらんとして上がらなくなる橈骨管(とうこつかん)症候群

橈骨管症候群は、鎖骨の下からわきの下、上腕骨の周りをらせん状に走っている橈骨神経が圧迫されて起きる手のしびれのことを言います。腕の体制が悪い状態でうたた寝をした時や、飲酒後の居眠りの時などによく起きることがあります。

例えば、ベンチの背もたれに腕を回して眠ったり、椅子の肘かけにちょうど神経が走っている部分があたっていたり。女性を腕枕して眠っているうちになることもあり「ハネムーン症候群」と呼ばれることもあります。

この時片方の手関節が上がらず、だらんとした状態になることを「下垂手(かすいしゅ)」といい、ビタミン製剤の服用と安静でたいていは治ります。しかし、まれにしびれや麻痺が長期に及ぶこともあり、神経の損傷部分を剥離する手術を行う場合があります。

 

首に負担が掛かると頚椎椎間板ヘルニアになる恐れが

椎間板ヘルニアと聞くと、腰のヘルニアを思い浮かべますが、首でも起こることがあります。例えば寝転がってテレビを観ている時、極端に首が曲がった状態になっていたり、パソコンを使う時、背中が曲がっていて首に負担がかかる姿勢になっていたり、重い荷物をいつも片方の肩に掛けていたり。このような時に頸椎の椎間板からヘルニアが突出し、神経を圧迫して手にしびれや痛みを来すようになります。

出来るだけ正しい姿勢を心掛けなければなりませんね。治療は、首を装具で固定する、もしくは牽引して頸椎の狭まった部分を矯正していきます。痛みが強い場合や、歩行障害、排尿障害を伴うような場合は神経を圧迫している部分を手術することもあります。

 

なで肩の女性に多い胸郭出口症候群

首から肩周り、胸の上部は鎖骨や第一肋骨、首からの筋肉が複雑に交差しています。その間を神経が走っていて、何らかの原因で隙間が狭くなり、神経を圧迫する疾患を胸郭出口症候群と言います。通常鎖骨は、両外側に向けて少し上に上がる緩やかなV字になっていますが、なで肩の女性の場合、上に上がらずほとんど一直線に近くなっています。

そのため、第一肋骨との隙間が狭くなり、神経を圧迫することがあります。また、男性でも、スポーツ選手など首から胸の筋肉を鍛えた時に発症することがあります。

つり皮を持ったり、洗濯物を干したりなど、腕を上げた時にしびれや痛みが強くなるという特徴があります。神経だけでなく、血管を圧迫することもしばしばで、上腕の麻痺と運動障害が強くなるとかなり重度な症状です。

症状が強いからといっても実際には手術が難しいこともあり、治療には運動療法やストレッチが第一です。しかも、状態は人ぞれぞれ違っていますので、経験豊富な医師に相談の上、壁押し腕立て伏せや斜角筋ストレッチなど、ご自身の症状に合った療法を根気強く続けることが重要です。

 

日本人に多い原因不明の頸椎後縦靭帯(けいついこうじゅうじんたい)骨化症

人間の神経は、脳から頸椎の中を通り肩や手に通じていきます。頸椎は7つの骨からなり、靭帯組織によって連結されています。脊髄の中で連結の役目を果たしている靭帯を後縦靭帯と言い、この靭帯が厚みを増し骨のように硬くなることを頸椎後縦靭帯骨化症と呼びます。

この病気の発生原因は分かっていませんが、欧米人よりも日本人に多いという特徴を持ち、治療費の助成を受けられる難病に指定されています。靭帯の骨化により、脊髄が圧迫され手のしびれや痛みを感じますが、多くの場合症状は軽く済んでいて、骨化があるにもかかわらず無症状のことも少なくありません。

しかしながら、骨化がどのように進行していくかは全く予測がつかず、慎重な経過観察が必要です。装具での固定や牽引などでの症状緩和も難しく、時には転倒などの軽いショックでも急激に悪化し重症化することがあります。麻痺が酷くなり、生活に支障を来すようであれば、骨化を除去する手術を行うしかありません。

 

腫瘍が神経を圧迫して手のしびれなどを引き起こす脊髄腫瘍

脊髄に腫瘍があり、神経を圧迫して手のしびれなどを引き起こしている場合があります。これは脊髄腫瘍と呼ばれるもので、大きく分けて脊髄の中にできる脊髄髄内腫瘍と、脊髄の外にできる脊髄髄外腫瘍に分かれます。

良性のものが多く、症状が軽ければ経過観察で様子を見ることになりますが、稀に悪性の場合があり、手術、放射線治療、化学療法が行われます。この病気で手術をした場合、術後の合併症が起きることが多くあり、長期にわたってリハビリが必要になってきます。

脊髄髄内腫瘍の場合、脊髄と腫瘍の境目が明確でないことが多く、腫瘍の周囲を大きめに取り除く必要があります。脊髄髄外腫瘍であっても、神経と癒着していることがあり、神経ごと取り除かなくてはならないことがあります。どちらにしても神経に損傷を与えることになりますが、腫瘍を放っておけば更に症状は悪化しますので、やむを得ないというところでしょう。

 

このように、手がしびれる原因として考えられる病気はたくさんあります。一時的な血行障害や神経の圧迫で引き起こされているものならすぐにしびれは収まりますが、数日間続くようなものであれば必ず整形外科や脳神経外科医師の診断を受けましょう。

また、上記のような病気の場合、多くは運動や生活習慣の改善、地道なストレッチやリハビリなど、長期にわたる努力が必要となってきます。医師の側にしても、これらの病気は人それぞれの状況が複合的に絡んできますので、正確な診断が難しい場合もあります。

ですので、医師に任せきりにするのではなく、患者が主体的に治療に関わっていくという姿勢を持つことが大切です。

 

まとめ

手がしびれる原因は神経の圧迫。7つの病気と治療法

手がしびれる原因は神経の圧迫。7つの病気と治療法
・小指がしびれないのは、手根管(しゅこんかん)症候群
・薬指と小指がしびれる場合は肘部管(ちゅうぶかん)症候群
・目が覚めると腕がだらんとして上がらなくなる橈骨管(とうこつかん)症候群
・首に負担が掛かると頚椎椎間板ヘルニアになる恐れが
・なで肩の女性に多い胸郭出口症候群
・日本人に多い原因不明の頸椎後縦靭帯(けいついこうじゅうじんたい)骨化症
・腫瘍が神経を圧迫して手のしびれなどを引き起こす脊髄腫瘍


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