股関節の痛みは、お年寄りの方々だけでなく、意外と若い人々にも多い悩みです。全身の体重を支え、立っている時、歩いている時、場合によっては座っている時にも負荷がかかっている重要な関節が股関節です。股関節が痛み出したら、間違いなく日常生活に支障が出てくるでしょう。
お年寄りの場合なら、適度な運動で健康を維持しなければならないのに、股関節の痛みのせいで、どんどん運動不足になり健康を損なってしまうという悪循環に陥りがちです。若い人の場合だと、仕事や趣味のスポーツが満足にできなくなり、老化を早めてしまいます。今日は、「股関節に痛みがあるな」と感じた時に、そこから回復するための手順をお伝えします。誰にでもできる手順なので、是非、参考にしてください。
股関節の痛みを和らげて
楽な動きを取り戻す5つの手順
1. 股関節の痛みの原因を知る
あなたの股関節の痛みの原因は何でしょうか?関節部分の骨が痛いのでしょうか?それとも関節の周囲にある筋肉が弱って、股関節の痛みと感じているのでしょうか?
股関節の痛みの原因には、はっきりとした病名がついている場合もあります。最も多いのが、変形性股関節症です。これは股関節の窪みと大腿骨(太ももの骨)の接続部分にある軟骨がすり減ってしまい、クッションの役割が弱くなって、股関節の痛みとなる病気です。高齢者に多く見られますが、若い人でも激しい運動を日常的に行っている人には起こりうる病気です。
また、ペルテス病と大腿骨頭壊死という病気も股関節の痛みを引き起こします。これらの病気は大腿骨の骨頭(ももの骨の股関節側の先端)へ血液が循環しなくなることで骨が壊死してしまう病気で、子どもの場合はペルテス病、大人の場合は大腿骨壊死という病名になります。
これら変形性股関節症、ペルテス病、大腿骨壊死という病気は、全て、関節部分の骨に異常が出る病気です。これらの場合は放置していると慢性化してしまい、股関節の痛みは増々ひどくなっていきます。骨に異常がないか、これらの病気かどうか、必ず専門の整形外科などで診断を受けましょう。
2. 生活習慣を改善する
さて、次は「なぜ股関節の痛みが出るようになってしまったか?」を考えて、その対策をしていきましょう。
最近、体重が増えたりしていませんか?股関節の骨とその周囲の筋肉は以前のままなのに、支えるべき体重だけが増えていれば、股関節の負担が増加しています。それが股関節の痛みになっているとしたら、肥満を解消することが先決です。
日常的に重いものを手に持って運んでいませんか?その重い荷物を、いつも左右どちらかで持って、体にひずみが出ていませんか?可能な限り重い荷物を持つことは避け、持つとしても、左右の手や肩でバランスを保つことを心がけましょう。左右どちらかだけに負荷をかけ続けると、人間の骨盤は斜めになってしまいます。股関節は骨盤と大腿骨がつながっている関節ですから、骨盤のゆがみ・ひずみは、股関節の痛みに直結します。
また、普段履いている靴の底は硬くありませんか?股関節はクッションです。靴の底が柔らかくて、股関節のクッション性を補助してくれていれば、その股関節の痛みは防げたかもしれません。一度、自分の靴を見なおしてみてください。
3. ストレッチを行う
股関節は大腿骨が骨盤の窪みにはまるようにして接続している関節ですが、関節の可動性やクッション性を補助するために、とても広範囲の筋肉が関係しています。前述の変形性股関節症の人は、これらの筋肉をすこしでも鍛えることで、軟骨の負荷を軽減し、股関節の痛みを和らげましょう。
また、幸いにも骨や軟骨に異常がなかった人は、周囲の筋肉がこわばっていたり、弱くなっていることが股関節の痛みの原因です。ストレッチを習慣にして、股関節の痛みを和らげましょう。
今日は特に簡単なおしりの筋肉のストレッチをご紹介します。どなたでも気軽に行えるので、是非トライしてみてください。
まずは1つ目。リラックスして仰向けに寝ましょう。そして両膝を立ててください。そしてその状態から、おしりだけを少しだけ浮かします。高く浮かせようとしなくても大丈夫です。おしりに力が入る程度で、少しだけ浮かしましょう。3〜5秒浮かせてから、力を抜いておしりを戻す。これを10セット繰り返すことで、おしりの筋肉が鍛えられます。
そしてもう1つ。足を伸ばしてうつ伏せに寝ます。その状態から片足ずつ、伸ばしたままで浮かせるだけです。高くあげるとよりおしりの筋肉が鍛えられますが、腰痛がある人は高く上げ過ぎないように気をつけてください。同じく3〜5秒を10セットでとても効果があります。
おしり以外にも、腹筋、背筋、腿の筋肉、股関節の外側の筋肉などのストレッチが、股関節の痛みを和らげるのに効果的です。無理の無い範囲で長い期間続けることが重要です。
4. 股関節に負担をかけない適切な運動を行う
ストレッチを続けてきて、股関節の痛みがだいぶ和らぎ、ずいぶん歩けるようになってきたなと思ったら、股関節に負担をかけない軽い運動を始めてみましょう。
最も負担が軽く、それでいて最も筋肉や心肺機能を鍛えるのに効果的なのが、水中でのウォーキングです。腰から胸あたりの水深のプールに立ち、ゆっくりで良いので、背筋を伸ばし、若干前かがみの姿勢で、膝を高く上げながら前へ歩いて行きましょう。次は同じ姿勢で後ろ歩きをします。そして、大股でなくて良いので、横歩き(カニ歩き)も行います。
これで股関節に負担をかけずに、全身の筋肉をバランスよく鍛えることができます。
散歩やウォーキング、自転車なども良いのですが、決して無理をしないでください。少しでも股関節の痛みが強くなったなと思ったら、すぐに休みましょう。
5. 生活の環境を工夫して改良する
最後に、いつでも股関節の痛みをやわらげるように、自宅の生活環境を見なおしてください。和式トイレは股関節に大きな負担となります。取り付け式の洋式便座のようなイスが介護用品店などで市販されていますので、利用してください。
布団よりベッドの方が、起き上がるときに股関節への負担が少ないです。また、居間や風呂場でも、なるべくイスを使うように心がけることで、股関節への負担を減らすことができます。
股関節の痛みで最も気をつけなければいけないのは、慢性化を防ぐことです。股関節の痛みを抱えたままの生活では、股関節だけでなく、他の関節の痛みや、果ては内臓疾患まで起こしかねません。健康の基本は適度な運動、運動の基本は股関節。これを意識して、焦らずに股関節の痛みを取り除いていきましょう。
まずは医師の診断から。診断を受ける際は、いつ頃から痛むのか、日頃の生活でどのような運動をどれだけしていたか、特に痛む動きや姿勢があるか、などをメモに書いて医師に報告しましょう。
骨の病気か、筋肉が衰えているのか、原因をはっきりさせた上で、その原因に対する適切な対応をしてください。ストレッチや運動は医師、理学療法士などの専門的な助言がとても大事です。痛みを慢性化させないように、無理をせず、焦らず、治療していきましょう。
今日のまとめ
股関節の痛みを和らげて、楽な動きを取り戻す5つの手順
・股関節の痛みの原因を知るために医師の診断を受ける
・肥満、重い荷物、底が硬い靴、などの生活習慣を見直して改善する
・股関節に関係する広範囲の筋肉をストレッチしてほぐす
・股関節に負担をかけない、水中ウォーキングなどの適切な運動をする
・洋式トイレ、ベッド、イスの利用など、自宅の生活環境を改良する