甲状腺は、人間ののどの部分にあり、ホルモンを分泌する働きを持つ大切な器官です。福島の原発事故の後、福島県内で度々子どもや住民たちの甲状腺検査が行われ、「水泡が見つかった!」とか、「腫瘍が発見された!」などと世間を騒がしています。
甲状腺はヨウ素という放射性物質を取り込みやすく、そのために原発事故後は数十年にわたって事故の影響がないかを検査していく必要があります。「甲状腺の病気になったらどうしよう。」と不安を抱えている日本人はとても多く、原発事故の影響と言えなくもないでしょう。
そこで、甲状腺に起こりうる病気の種類と症状などを調べてみたので、以下を参考にして甲状腺病について知見を広めてください。病気を闇雲に怖がるのではなく、予防を目標とした対策を立てておくべきでしょう。
甲状腺の病気がよくわかる!
種類や症状などの基礎知識☆
体が火照るバセドウ病
甲状腺の病気と聞いて「バセドウ病」を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。甲状腺はのどの中心部でハート型の形をした器官です。バセドウ病になると甲状腺全体が腫れあがるため、喉がハート形に盛り上がります。
バセドウ病になると疲れやすくなり、寝不足や多汗症になりやすく、そのためか始終イライラします。また、バセドウ病の特徴として、眼球が突出したように飛び出てきます。
数年前にサッカー選手の本田圭佑が、のどの手術を受けたときに、「そういえばやけに眼球が飛び出ていたけど、バセドウ病だったのかな?」という疑問がネットにあふれ出ました。
甲状腺の機能低下による橋本病
バセドウ病と症状が似ている甲状腺の病気で、橋本病というものがあります。首の腫れや寝不足や寒がりになるなどの症状が出て、食べてなくとも体重が増えるのが特徴です。また、子どもが橋本病にかかると、物を投げたり叩いたりして、やけに怒りっぽくなると言います。
甲状腺のホルモン分泌が低下することで発症する病気なので、甲状腺のホルモンを補充する薬物療法で症状を緩和させます。たいていは1週間ほどの入院で済みますが、薬自体は長期間にわたって飲み続けなくてはなりません。
中高年女性の更年期障害
月経が終わりに近づく年齢になると、女性は「更年期障害」と呼ばれる甲状腺の病気になることが多いと言います。
毎月排卵していた卵子がなくなり、女性ホルモンが急に激減してしまうことが原因と言われています。甲状腺はホルモンを分泌する働きがあるため、甲状腺の働きが急激に落ちたともいえるでしょう。
更年期障害になると、体が火照って汗をかきやすくなります。また、落ち込みやすくなり、対人関係が苦手になる人もいます。婦人科を受診すれば、症状を抑える薬を処方してもらえるでしょう。また、市販の更年期対策の薬や、漢方も効くと言われています。
無痛の炎症
甲状腺に何らかの異常がおき、甲状腺にためられていたホルモンが血中に流れ出てしまう甲状腺の病気があります。これを無痛性甲状腺炎といいます。出産を機にこの病気にかかる人が多いのですが、はっきりとした原因はわかっていません。
動悸が激しくなり、体が火照るなどの症状はバセドウ病と似ているため、しばしば誤診されます。しかし無痛性甲状腺炎は、薬物療法などの治療を全く行わなくても、自然に治る病気です。
甲状腺が破壊されたとき
何らかの原因で、甲状腺が破壊され、ホルモンが正常に分泌されなくなる病気があります。これを突発性粘膜水腫と言います。甲状腺のホルモン分泌が著しく減少するため、イライラしたり寝不足になったり体が火照るような症状が現れます。
橋本病と似ているのですが、甲状腺が腫れあがらない点が違います。突発性粘液水腫の場合は、甲状腺の腫れは起こりません。
良性の腫瘍ができる
甲状腺に腫瘍ができることは多々あります。甲状腺の病気で腫瘤ができるものはいくつかあります。甲状腺は腫瘤ができやすい場所と言ってもいいくらいでしょう。結節性甲状腺腫という良性の腫瘍ができる病気がありますが、良性の場合はさほど怖がらなくてもいいでしょう。
手術をするかどうかは医師の判断にゆだねていいのですが、「良性の腫瘍だから。」と油断して、なかなか病院に行かない患者さんも多いため、なるべく早く受診することをお勧めします。良性の腫瘍であっても手術で取り除いた方が良い場合も多く、検査によってその判断を早くするべきだからです。
悪性の腫瘍ができる
悪性腫瘍の甲状腺の病気は、化学療法を行うこともあるため、早めの受診をおすすめします。甲状腺にできる悪性腫瘍は、他の部位のがんなどに比べて進行が遅いことが特徴ですが、だからと言って油断してはいけません
。原発事故後に一番恐れられているのは、甲状腺に悪性腫瘍ができることでしょう。放射性物質を体に浴びることで発症しやすい病気として、チェルノブイリの原発事故後に一気に患者数が増えたことで有名になりました。比較的予後の良い悪性腫瘍と言えるでしょう。
さて、甲状腺の病気を、種類や症状などにわけて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
甲状腺にできる腫瘍に関しては、定期的に甲状腺のエコー検査などを行うことで早期発見できるでしょう。特に、原発事故による被曝に不安のある方は、年に一度は甲状腺のエコー検査や血液検査を積極的に受けた方が良いでしょう。
甲状腺の病気は、甲状腺の機能が低下する場合も、ホルモン分泌が過剰になる場合も、出てくる症状は大体似通っていると言えるでしょう。
まとめ
甲状腺の病気がよくわかる!種類や症状などの基礎知識☆
・体が火照るバセドウ病
・甲状腺の機能低下による橋本病
・中高年女性の更年期障害
・無痛の炎症
・甲状腺が破壊されたとき
・良性の腫瘍ができる
・悪性の腫瘍ができる